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    剱岳

    2016-09-04

    私が勤めている会社に、2年前から沖縄の企業からお手伝いに来ているY内さんが、この9月末をもっていよいよ沖縄に帰る。Y内さんは長野に来てから山を始めたのだが、この2年間で北信五岳や北アルプスを登ってきた。なかなか行けない山ということで今回は剱岳だ。同僚のS田さん、山友のT島さんが剱岳に初めての女性2名が参加することとなった。山を始めて間もない3人だが、みんななかなか体力がある。とはいえ、無理のない日程として、9月3日に富山側からアルペンルート経由で室堂に入り剣山荘で一泊し、翌4日に剱岳に登頂することにした。

    9月3日

    朝6:00に3人を車でピックアップし長野を出発し、8:30前に立山駅に着いてみると、すでに駅に近い駐車場は満杯で1kmほど離れた駐車場に車を停める。アルペンルートは少々混んでおりすぐにはケーブルカーに乗れず、9:40のケーブルカーに乗り込む。

    11時前に室堂駅に到着すると雲はうっすらでているもののまずまずの天気だ。室堂に初めて来たY内さんは日本離れした雄大な景色に感動しきりで、連れてきた私としてもうれしい限りだ。今日は4時間ほどの歩いて剣山荘まで着けばいいので余裕をもって行動できる。雷鳥平に着くと正午少し前になり、それほど動いていないのでお腹はそれほど空いていないが、お湯を沸かして30分ほどゆっくりと昼食をとる。

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    本日ののんびりスケジュールでは、雷鳥坂の登りが核心だ。お昼を食べたばかりということもあり、ゆっくり登っているつもりだったが、気がつくとコースタイムでは2時間のところを1時間10分ほどで登ってしまっていた。みんな元気だ。別山乗越から明日目指す剱岳を見ると、残念ながら頂上は雲に覆われている。

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    途中で剣沢方面を見てみると、例年では劔沢のテント場あたりの谷には雪が多く残っているのだが、今年はほとんど雪がない状態だ。

    劔御前の斜面をトラバース気味に20分ほど下っていくと今日の宿の剣山荘が見えてくる。剣山荘ではシャワーを浴びることができる。雷鳥坂の登りではみんなそれなりに汗をかいたので、知らず知らずにシャワー目的で足早になってくる。

    剣山荘は最近改装し、部屋もトイレもとてもきれいだ。みんなすぐにお目当てのシャワールームに向かう。石鹸類は使うことはできないが、汗を流してさっぱりとする。

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    剣山荘の前のテーブルで雄大な景色を見ながら、明日の登頂を願ってビールで乾杯する。

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    9月4日

    未明3:30に起き、外を見てみると星がしっかりでており快晴のようだ。このところ連続してやってくる台風の影響のためか、大気が湿っていて曇りがちの日が多く天気を心配していたが、ひと安心である。前日のうち作ってもらった朝食弁当を食べ、ヘルメットにヘッデンをつけて4:30に小屋を出発する。

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    30分も歩いていると徐々に明るくなり、ヘッドランプは不要となる。別山の稜線あたりには雲が垂れ下がっているが、こちらは晴れている。有料の山の天気予報サイトをみてみても、今日は午前は晴れが続きそうだ。ところどころ少し困難な鎖場では渋滞をして少々待たされるが、一服劔、前劔と概ね順調に進んでいく。

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    いよいよ核心であるカニのタテバイに着くと、10人ほど取付いているうえに20人くらいが並んでいる。過去2回登ったときはとてつもなく高く垂直になった岩壁だと感じたが、アルパインクライミングをやりだしてから今あらためてみてみると、高さはそれほどもないし約80度くらいの寝た壁にしっかりと鎖と杭が整備されており、全く恐怖心を感じない。他のメンバー3人も何度かクライミングジムや近くの岩場で登攀練習をしたせいか何の問題もなく登ってくる。

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    カニのタテバイから30分ほど登り、7:20に剱岳到着!ブログやSNSでアップされているように定番の祠の前で看板をもって記念撮影だ。メンバーは念願の剱岳ということでみんないい笑顔だ。

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    左方向の小ピークでなかなかいい写真が撮れそうだったのでこちらでも記念写真だ。足場が悪く少しでもよろけたら滑落するのでビクビクしながら撮影だ。

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    天気もよくちょうどいい気温でしばらく頂上を20分ほど堪能する。

    さて下山開始だ。登りは気分が高揚していたのでいいが、今まで登ってきた歩きにくい岩場を下っていくことを考えると少々気がなえてしまう。

    カニのヨコバイ、前劔、一服劔を過ぎて剣山荘に到着し、お湯を沸かし早めの昼食をとる。

    別山乗越まで登り、その後急な雷鳥坂を下っていると、徐々にガスが濃くなり、雷鳥平に到着すると雷とともに雨が降り出した。慌ててレインウェアを着込み、雷にビクビクしながら室堂まで進む。

    天気が悪くなったせいか、みくりが池山荘の近くで雷鳥がつがいが現れる。室堂平のあたりではオコジョがチョロチョロしていた。

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    室堂に着き、荷物を整理し、15時発のバスにそそくさと乗り込む。

    帰りに、立山の吉峰温泉で汗を流し、妙高市のニューミサでニンニクたっぷりのミソラーメンをいただく。長野に着いたときは21時近くになっており、もうフラフラである。

    私は剱岳には、15年前のテント泊、5年前の日帰りトレランと今回の小屋泊で3度目である。間があいていることと小屋泊で心の余裕があったせいかもしれないが、3度目ではあっても初めて来ているような新鮮さと感動があった。本当に初めての3人にとっては私以上の感動があったはずだ。険しい山がない沖縄に戻るY内さんには最高の思い出になってくれることだろう。

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    妙高山

    2016-08-28

    北信五岳のうち4座登頂した同僚のY内さんより、「最後に残った妙高山に行きましょう!」とお誘いがあり、会社の山仲間や知人に声をかけたところ、総勢7人で行くことなった。

    数週間前より有料の山の天気予報サービスを利用し始め、総合的に情報をとれるため、山の天気の判断材料となっている。私はこのサービスで天候は安定すると予想していたが、朝6時に長野市内に集合すると、前日から結構雨が降っていたので、みんな中止になると予想していたらしく、中止になる連絡を待っていたようだ。2台に乗り合わせて登山口である燕温泉に向けて出発する。

    7:30に燕温泉を出発し、川原の湯を通り過ぎ樹林帯に入る。最初から急登なので汗が噴き出してくるが、前日の雨のせいか湿度が高く汗が乾かず蒸し暑く感じる。

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    胸突き八丁を登ると全員汗だらけだ。天狗堂の広場で休憩をとる。

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    だんだんと暑さで消耗しながらも1時間ほど登ると鎖場に到着する。クライミング経験者には何ともない鎖場だが、慣れていない人は「怖い」とか言いながらも嬉しそうに登ってくる。

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    11:40に到着し、みんなで記念写真。ガスがでて周囲の景色が見えないのは残念だ。山頂でお湯を沸かしてのんびりと食事をとる。

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    下山は来た道を戻り、胸突八丁からはコンクリートで舗装されたほうの道を行く。

    15:30に駐車場に到着し、無償の露天風呂である「黄金の湯」へ行く。どちらかというと登頂よりこちらがメインだったりする。

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    その後、18号線沿いでトウモロコシやら、信濃町の道の駅で名物のソフトクリームをいただく。

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    登山+温泉+うまいものでテレビ信州あたりで特別番組にしてもいいような充実した山行であった。ストイックなクライミングや沢登りもいいが、登山と観光の中間のような山旅も楽しいものだ。

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    白馬岳テント山行:ボッカと高所順応訓練

    2016-07-31

    所属山岳会で8月下旬の北岳バットレス・クライミングを自分がリーダーで企画した。しかし、自分自身の能力で心配事がいっぱいだ。心配事その1:本番でのアルパインの経験が少ない。心配事その2:ここのところ重い荷物を担いで長時間の登山はしていないくてボッカが心配。心配事その3:先々週の西穂高山荘と先週の谷川岳ロープウェイ駐車場では高所のせいなのか大して気温は低くもないのに寒気をかなり感じてしまった。(これはアルコールのせいかもしれない)。

    心配事その1は、数をこなすしかないが、このアルパイン山行では天候不良や体調不良、他のアルパイン山行の日程調整ができないなどでなかなか経験値を上げることができない。これからは、あまりまとまった時間はとれないので、暇をみつけてはゲレンデで練習に励むしかなさそうだ。

    心配事その2とその3については、白馬岳でテント泊することで、25kg程度のザックを担いで標高差1500mを難なく歩くことができるか、気温10℃前後の高所のテント場で寒さを感じずに寝ることができるかを確認することにした。

    7月30日

    7:30に猿倉の駐車場に到着する。土曜のこの時間帯では一番の上の駐車場に車を停めるのは難しいかと思っていたが、比較的空いており、停めることができた。

    8:00に猿倉山荘の登山口に登山届を出して出発だ。

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    久しぶりの25kgのザックはとてつもなく重く感じる。『荷物が重い。。。』という気持ちでいっぱいになりながら、一歩一歩足を前に出していく。だんだんと重さになれてきたが、途中でばてるのを懸念して、いつもよりゆっくりめに歩いていく。

    9:00に白馬尻山荘に到着した。重荷の割にコースタイムどおりの1時間なのでまずまずのペースだが、疲労度合としては3時間程度登ったくらいの疲れ具合だ。普段は2-3時間ごとに数分休憩をとる程度だが、1時間ごとに数分の休憩を余儀なくされそうだ。

    20分ほど樹林帯の中を登ると、大雪渓の末端に到着し、アイゼンを装着して登り始める。ガスが立ち込め視界がきかない中、ときおり左側の杓子尾根からガラガラと石が崩れる音が聞こえる。落石に気づかなず直撃されるんではないかと不安だ。

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    10:40 大雪渓の上部末端では、いつもならもっと上部で安定した場所から葱平の岩場に移るのだが、かなり下に後退しており、浮石だらけの岩場から葱平に上がり、アイゼンをはずす。

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    ここからは標高が上がるつれて高山植物の花が多く咲いている。花にはそれほど興味はなく名前もうろ覚えだが、白・黄・紫の様々な色の可憐な花はザックの重さを忘れさせてくれる。DSCF1123_800

    そのうち雨が降り始め、あっというまに大雨となった。レインウェアを着込み、大岩の下に潜りんで、しばし雨宿りだ。10分ほどすると小雨になってきたので歩き始めるが、レインウェアのせいで蒸し風呂状態になってきた。数十分登ったところで再び大雨が降り出した。また、大岩を見つけてはその下で10分ほど雨宿りだ。

    雨が小降りになってきたので、再び出発する。雨と重荷のせいでペースはかなり落ちてきた。

    13:30 白馬村営頂上宿舎に到着し、テント場に行くと、50張程度張られていて、もうすでに条件のいい平坦地は埋まってしまっている。奥のほうに進み何とかスペースを確保した。雨の中、何とかテントを張り、荷物をテントに入れる。

    テント設営後、白馬岳に登る予定だったが、この雨ではしかたがない。テントの中でお湯を沸かしてコーヒータイムとする。しばらくゴロゴロしていると15:30ころやっと雨が止み日が少し差し出した。濡れたものを乾かすチャンスとばかり、周囲の岩などに濡れたウェアやザックなどを広げる。1時間ほどでほとんどのものは乾き太陽のありがたみを感じていたら、また雨が降り出した。乾いた荷物を慌ててテントにほおりこむ。

    18時前になり、そろそろ日没も近いので夕飯準備だ。本日のメニューは、アルファ米では味気ないので生米から炊いたご飯、高級牛ロースの焼肉、野菜たっぷりの味噌汁である。おいしい食事をしたいがために、調理器具・食料でそこそこの重さにはなってしまったが、いいボッカ訓練になっている。

    食事を終えるとすっかり暗くなり、20時ころには周囲のテントは寝静まり始めたので、私も寝ることにした。今回は薄くて暖かい肌着は何だ?ということで、試しにユニクロのヒートテックのシャツとタイツを持ってきたので着用してみた。ヒートテックは汗をかいて濡れると冷えてしまい、行動着としては適さないものの、休憩している状態ではすこぶる暖かい。山ではヒートテックは使い物にならないと思っていたが、休憩時の肌着としては有用だ。夏用の薄手のダウンシュラフを持ってきたのでとりあえず入って寝たが、肌着にヒートテックを着ていれば薄手のダウンジャケットとダウンパンツとシュラフカバーで十分である。

    7月31日

    2時ころトイレに行きたくて目を覚まし外に出てみると、ガスはすっかりとれ晴れ渡っている。大気が少し霞がかっているので、満天の星というほどではないが、そこそこ星も天の川も見える。気温も10℃前後だろうけど寒さを感じない。タンパク質を摂ると、その消化のために腸がよく動き、その熱で体が温まるという。夕飯で大量の焼肉を食べたせいかもしれない。アルコールを飲むと、酔っている間は体が温まっているが、血流がよくなりすぎて放熱しすぎて、酔いがさめたときに急激に体が冷えてしまう。今日は冷えの原因となるアルコールを飲んでいないこともあるかもしれない。軽い高山病の兆候だろうか、わずかながら頭痛がするので、鎮痛剤を飲み再び眠る。

    4時を過ぎるとうっすら明るくなり、周囲のテントも起きだしてきた。昨日のうちに白馬岳に登頂していれば、今日は杓子・鑓方面に行く予定だったが、昨日の雨のために予定を変更し、今日は白馬岳に登頂後、テントを撤収し、下山することにした。頭痛もとれ食欲もあるので、朝飯には昨日炊いた白米でチーズリゾットを作って食べる。

    5:00に必要最小限の荷物で白馬岳を目指してテント場を出発。

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    短時間のうちにガスがでたり無くなったりで、視界も遮られたり開けたりクルクル変わる。途中でガスがとれ素晴らしい光景が開ける。

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    5:40 白馬岳に到着。

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    無雪期の白馬岳は4回目だし、ボッカと高所訓練が主目的なので、登頂したこと自体にさほど喜びはないが、このところ山の中で体調不良を感じることがしばしばあったが、今回は好調だったので、無事に登頂できたという点では喜ばしいことだ。

    白馬岳を下り、テント場に戻ると半分以上のテントは撤収されていた。昨晩の雨でテントなどがかなり濡れていたので、干すことにした。1時間ほど干しているとすっかり乾いたので畳んでザックにおさまめ、8:00に下山開始である。

    普段はバランスが悪くなるのでストックは使わないのだが、25kgという重さでは不安定であるので、ストックを使って下っていく。葱平の岩場はスリップしないように気を使うが、花々が咲き乱れていて、気持ちが休まる。

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    大雪渓の末端よりアイゼンを履いて下っていく。大雪渓に来るとほとんど走っているくらいのペースでストックをつきながら下っていく。あっという間に大雪渓を下り終え、アイゼンをはずし、白馬尻に向かう。すると急に雲が濃くなりだし、あっという間に土砂降りになってきた。慌ててレインウェアを着込む。せっかく朝一番で乾かしたのに残念だ。

    白馬尻を過ぎ、猿倉に着くまで、雨は降り続く。12:00に猿倉の駐車場に着きザックを降ろしてレインウェアを脱ぐと上半身は中まで濡れているし、背中から伝った雨水がザックの中まで浸水し、ザックの一番底にいれていたテントもビショビショである。乾いたタオルで体を拭き、着替えて帰途についた。

    散々雨に降られたのが少々辛かったが、25kgのボッカと2700mあたりでの耐寒・高所順応は大きな問題はなかったので、北岳クライミングに対する不安材料の一部は解消された。年齢とともに登山に必要な能力が低下していくのかと不安であったが、若いころやっていたことは体は覚えていて、きついことを一回やれば復活するものだ。

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    谷川岳:鎮魂の谷めぐり

    2016-07-24

    所属山岳会4名で7月24日に谷川岳一ノ倉沢4ルンゼをクライミングすることになった。12時間程度の長丁場になるので、24日4:30から出発するため、前日23日夜から谷川岳ロープウェイの駐車場に泊まり込み、早朝未明に出発である。

    飯山道の駅に21時に集合し、23時にロープウェイの駐車場に到着した。駐車場は屋内駐車場で夜間は開放されており、車はポツポツ停まっている程度だ。最初は屋外でテントの予定だったが、ここであれば車の横で雑魚寝で十分だ。少々の酒盛りを行い、シュラフにくるまって眠る。

    最初のうちはアルコールが回って気持ちよかったが、1時間ほどたつと急激に寒気を感じてきた。気温14-5℃程度くらいだろうか。その程度あればシュラフで十分暖かいはずなのだが、いやに寒く感じる。下戸の私は、アルコールを飲むと、血行がよくなりすぎるのとともに熱を放出しすぎて、体を冷やしてしまったようだ。

    寒気を感じよく眠れないまま、起床時間の未明3:30を迎えると、寒気はするし頭痛とともに吐き気もする。何とか起きてお湯を沸かして朝食を食べようとするが、食欲どころか吐き気がして全く食べることができない。10分ほどウロウロして体を暖めるが、頭痛と吐き気は治まらない。『歩いているうちに治りそうだが、食べていないのでシャリバテになるのは間違いない。これでは12時間行動は無理』と判断し、リーダーのMさんに『体調不良で居残ることにしたい』と申し出る。

    4:30に3人が出発したのち、私は車の助手席を倒し、休息することにした。3時間ほど頭痛と吐き気で辛かったが、徐々に回復してて、8:30ころにやっと食欲がでてきたので、朝食を食べることができた。9:00にやっと歩き回れるようになって、外の様子を見てみると、上空は雲の合間からときおり太陽は顔を出しているのだが、谷川岳の稜線はガスに覆われている。せっかくここまで来たので、クライミングのメッカである主要な3つの谷と岩壁を偵察がてら、ハイキングして見物することにした。

    9:30に準備を整えロープウェイ駅兼駐車場を出発である。

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    舗装道路を少し登ると緩やかになる。少々頭痛はするが耐えられないほどではない。稜線はガスで覆われているため、同様の目的のハイカーも結構多い。

    西黒尾根を回り込み、最初の大きな谷のマチガ沢に到着する。事前に調べていないので有名なルートである東南稜がよく分からない。

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    マチガ沢を進み東尾根を回り込むと、一ノ倉沢の手前には避難小屋がある。中に入ってみるとジメジメしてひんやりしており、夏で雨が降っていなけれは、間違いなく外でテントのほうが快適そうだ。

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    少し先に進むと、大きな一ノ倉沢が現れる。

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    その圧倒的な大きさに後ろから来た数人のハイカーは「おおーっ」と声をあげていた。ルートを説明した大きな案内板があり、取付きであるテールリッジや有名な鳥帽子沢奥壁南稜も間近に見え、登攀意欲がふつふつと湧き上がってきて、朝の体調の悪さが本当に悔やまれてくる。

    沢を渡り、沢の右側の岩稜帯には無数の慰霊プレートが埋め込まれている。「xx xx(姓名)19歳 一ノ倉沢xxルートに眠る」「xx xx(姓名)21歳 安らかに~」という悲しい墓碑銘が刻まれている。登りたいという気持ち、見極めを越えた自然の猛威、その狭間の中で多くの若者がここで命を絶たれてしまった。それを見た途端、安易にとりついてはいけない場所であり、今日は体調不良で行かなかったのは正解であった、と思わずにいられない。

    さらに奥に進み、また一ノ倉尾根を回り込むと、次の大きな谷は、幽ノ沢である。中央壁正面フェースが魅力的だ。稜線には終始ガスが覆いかぶさり、魔の山という雰囲気を漂わせるが、クライミングを少しかじったものにとっては、目の前に大きな岩壁についてうい引き込まれてしまう。

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    最後の谷をあとにして、沢を少し越えた先には冷たい湧き水が湧いている。『ブナのしずく』。なかなかいい名前だ。

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    この先を20分進むと林道に縄張りがあり、その右手に湯檜曽川沿いの新道へと下る登山道が現れる。「沢の橋が流され、沢では道が荒れているので、新道へ極力行くのは避けてください」と案内看板もある。「極力」っていったい何だ?「大雨に場合」「初心者の場合」とか条件を明確にしてほしいところだ。

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    きっと両方の意味なのであろうから、天候も安定しているし初心者でもないし、沢を渡れない場合に今来た道に戻る登山道を確認し、この登山道を下って行った。10分ほど下ると立派な巡視小屋が現れる。

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    新道は湯檜曽川沿いの緩やかな平坦な道だ。正午に近づき太陽のもとでは暑いが、樹林におおわれた新道は涼しく快適に歩いて行ける。沢では確かに橋が流されていたが、ほとんど水のない沢で増水時でなければ、全く危険性はなかった。ヤブの切れ目から湯檜曽川に降り立つと川の流れが涼し気である。

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    1時間ほど歩き新道も終わるあたりで、西黒沢の5mの小さな滝が現れて水しぶきを含んだ風が吹き、暑さを吹き飛ばしてくれる。

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    13:00ころにロープウェイの駐車場に戻ると、蒸し暑さのせいか、また頭痛がしだしたので、鎮痛剤を飲み、車のシートに横たわり3人の帰りを待つことにした。

    結局、3人が帰ってきたのは暗くなり始めた18:30ころだ。みんな疲れ果てているが充実したクライミングだったようだ。そこから、日帰り温泉の定番「湯テルメ谷川」に立ち寄り、帰途についた。

    多くのクライマーの命を飲み込んでいった谷川岳だが、それ以上に多くのクライマーは無事に登り切り、楽しさと充実感を与えてくれている。今回は体調不良で登れなかったが、機会を作って再度訪れて、登ってみたいものだ。

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    西穂高岳

    2016-07-18

    所属山岳会の夏合宿で北岳バットレスでのクライミングを8月末に計画しているのだが、その練習として、MさんFさんの3人で北アルプス錫杖岳にクライミングしに行くこととなった。予定では7/17早朝に長野を出発し、新穂高温泉から歩いて昼頃に錫杖沢に到着して幕営し、7/18早朝より錫杖岳でクライミングする予定である。しかし、数日前からの天気予報は、雨・曇り・晴れがコロコロ変わり、全くあてにならない。

    7月17日

    7:30に3名が長野市内に集まり、天気予報をみてもはっきりしないので、とりあえず新穂高温泉まで行くことにした。時間が経つにつれて徐々に天気が悪くなり、10:30に新穂高温泉に着いたころにはそこそこの雨が降り出した。この雨では錫杖岳の岩は濡れて乾きそうもないので、3名で相談した結果、高所順応と岩場トレーニングを兼ねて西穂高岳に行先を変更することにした。西穂山荘で幕営し、翌7/18に西穂高岳までピストンという予定だ。

    車を新穂高ロープウェイの白樺平駅駐車場に停めた12:30ころには、雨はとりあえず止んでしまった。ロープウェイに乗っていくが、雲はどんよりとたちこめ、晴れそうな気配はない。西穂高口駅に到着し、出発しようとしたところ、再び雨が降り出した。正直言って雨の登山は大嫌いである。ここまで来てしまった以上行くしかないので、レインウェアを着込んで出発する。

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    2000mを越えているのでそこそこ気温は低いのだが、それ以上に登りで体温が上昇し、汗が噴き出てレインウェアの中は蒸し風呂状態だ。1時間ほど歩いて13:00に幕営地の西穂山荘に着いたが、かなり疲弊してしまった。

    周囲はガスで真っ白な中、テントを設営したあと、やることもないので、テントの中で飲み会である。

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    テントの中で飲みながら、会の話、山の話で盛り上がる。

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    だんだんと気温が下がってくる中、Fさんは寒くなり体調があまりよくなさそうなので、小屋の売店兼自炊室のが暖かいのでイスに座りテレビを見ながら体を暖める。私は日ごろ飲まないが少しばかり飲んだので、暖かさもあいまってウトウトしてしまう。

    日も落ちて、そろそろ眠くなってきたので、テントに戻ってシュラフカバーに入り就寝しはじめる。しかし、1時間ほどウトウトしたところで、あまりの寒さで目が覚めてしまった。気温は10℃以下になっているのだろう。もともと1500mの南面でビバーク予定だったこともあり、あまり防寒対策は用意してこなかった。上はダウンを着ていて暖かいのだが、下はズボン一枚で下半身が冷えてしまって、眠りにつけない。レインウェアのズボンをはいたり、ザックに足を突っ込んだり、いろいろしたが上から降りてくる冷気は防げない。ほとんど眠れないまま朝を迎えた。

    7月18日

    夜明け時には寝不足と寒さで体調はよくなかったが、とりあえずお湯を沸かし暖かい食事をとったところ、少し体調が回復してきた。Fさんも寒さであまり眠れなかったようだ。ベテランMさんはさずが「特に寒くなかったよ」と平気のようだった。

    天気は昨日とは一転し、上空の雲はなくなり、すっかり晴れ渡っている。体調が悪いうえに天気が悪ければ登山のモチベーションは下がりまくるのだが、ここまで好天になると俄然行く気が沸いてくる。

    濡れたテントを撤収し、小屋の荷物の置き棚にテントを置いて、6:15に小屋を出発する。

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    ハイマツが生える登山道を進んでいくと、徐々に道は岩稜帯となっていく。1時間ほど歩き西穂独標には7:15に到着する。ここまでは「少し険しい登山道」でそれほど危険はない。西穂独標で5分ほど休む。

    通常の登山地図では危険な登山道は破線で記載されいてるが、ここから西穂高岳は破線である。さらにこの先にはジャンダルム~奥穂高まで続いている。

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    このルートは「日本最難関の登山道」という意味がよく分からない称号が某山岳雑誌より与えられ、おまけにその雑誌ではしばしば単独行を美化するような特集が多く、その雑誌の特集そのままのウェアに身を包んだ単独登山者が多く目についた。

    寝不足と寒さの影響で、岩を触っても手になじまないし、足を岩においても違和感があり、危険個所ではいつもどおりに体が動かず、緊張してしまい、動きがぎこちなくなってしまう。しかし、ピラミッドピークあたりまで来ると、徐々に眠気もなくなり手足が岩になじんできて、『岩登り、楽しー!』という状態になってきた。

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    小さなピークをいくつか越し、西穂高岳直下の急な岩壁に到着して私たちが登り始めると、上部で数人の若者が下ってきた。彼らはルートである固い急な岩場を避け、比較的ゆるい脆い浮石だらけのザレ場に入り込んできた。すると、わたしたちの10mほど上から、こぶし3個分くらいある石を彼らの一人が誤って落としてしまい、私の50cmくらい隣をかすめていった。これ以上石を落とされたら堪らないので、「そこは浮石だらけで危ないぞー!戻って!戻って!」と大声で注意して、登りを続行した。彼らの待っている場所に到着すると、確かに浮石のザレ場のほうが安心して下れるように見えてしまう場所であった。

    そこから20mほど登ると、西穂高岳山頂である。独標からは1時間弱かかり8:12に到着した。

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    今日は晴れ渡り360度の展望が開け、北アルプスの素晴らしパノラマが展開されている。稜線の先には奥穂高、その隣には前穂高、奥穂の先には槍の穂先がそびえ、さらにその奥には剱岳が顔をだしている。展開される山々が気になり、地図をみながら山座同定をしながら、ゆっくりと休憩する。

    来た道をまた戻るときには岩場にすっかり体が慣れて恐怖感はほとんどなく下っていくと、今日は天気がいいため多くの日帰り登山者が登ってくる。西穂山荘とロープウェイ駅間の登りでは、スニーカーの軽装の観光客や子供連れの家族も多く登ってきていた。

    11:45のロープウェイに乗り込み、観光客と混じって下山をする。

    下山し駐車場まで戻ると、日差しが強く気温も高く、数時間前までの涼しさが嘘のようである。帰りの道すがら登る予定であった錫杖岳の前衛フェースを間近に眺めることができた。この暑さでは結果的に 登らなくてよかったかもしれない。しかし、要塞のような岩壁は登攀意欲を掻き立てるには十分で、「涼しくなったら登りに来るぞ!」と決意も新たにさせられる。

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    昨日からの汗を流すため、新穂高温泉の「槍見館」の露店風呂に入る。湯温はかなり熱くゆっくり入っていられないので、岩の上に逃げるが、岩も強烈な日差しで熱したフライパン状態になっている。そこで、お湯を岩にかけて、何とか座れる温度まで下がってきた。その上で川の音を聞き、遠くの槍の穂先を眺め、ときおり吹く風に体を冷ましたり、ときどきお湯をかけて、露天風呂を楽しんだ。

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    雨で余儀なく予定を変更し、高所順応と岩場トレーニングを兼ねて西穂高岳登山となったが、予想外の好天に恵まれて充実した登山となった。夜の寒さで眠れないと翌日の体調に大きく影響するため、北岳バットレスでは夜の保温対策を軽量化を考えながら準備する必要があるというのが今回の教訓であった。

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